シントラからユーラシア大陸の西の果てロカ岬まではそれほど遠くはありません。
でもどんな大大陸の岬だろうと、小さな半島の岬だろうとそんなに変わるものではありません。 時間の都合もありましたが、私たちはあえてロカ岬には立ち寄らずに北上。 なだらかで明るい丘陵地。 ところどころ真っ白な壁、落ち着いたオレンジ色の家々が点在する道。 丘の上には風力発電の白い風車が立ち並んでいます。 目指すマフラ修道院までは約1時間。 何にもない丘陵地に忽然と巨大な修道院が現れます。 とにかく巨大なものです。 ぎらぎら照りつける日差し。 修道院の周囲は、いたって静かな町。 広い修道院前の広場にも街中にも人の影が見えません。 ちょっと不思議な感じがします。 この修道院を建立したのはジョアン5世。子どもの誕生を願って1717年から13年をかけて建築されました。 1693年、ポルトガルの植民地だったブラジルで金鉱脈が発見されました。 以後半世紀にわたり、莫大な量の金がポルトガルに流入することになったのです。(最盛期は1720年から1750年にかけて) これらの富は国王や上流貴族が独占。 ジョアン5世は、絶対的権力を持つ国王の威信をかけ、このマフラ修道院を建設したのです。 大理石以外のすべての材料は国外からの輸入品だったそうです。 この莫大な富を産業化にあてていけたら、ポルトガルは、もっと繁栄していったのでしょうけれど、残念ながら国王らの贅沢な嗜好を満たすためのみに消費され、その富は輸出国の主にイギリスに流失してしまったのでした。そして、イギリスは産業資本を蓄積し、世界のどこよりも早く産業革命を成し遂げたのでした。 静かなマフラ修道院のカテドラルからパイプオルガンの音色が聞こえてきました。 薄いピンク色の大理石でできたカテドラルは、デコラティブなマヌエル様式ではなく、ドイツ人の建築家による洗練されたバロック様式。大変優雅な作りです。 立派なカテドラルの中には6基のパイプオルガンが設置され、その一台がまさに演奏中でした。 カテドラルの中で聞くパイプオルガンはまた格別なものでした。 ポルトガルの歴史を考えるには、ロカ岬ではなくマフラ修道院に立ち寄ってよかったような気がします。
by small-small-world
| 2012-09-01 11:20
| ポルトガル2012
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